2010年12月20日月曜日

研究者・大学の役割

立ち止まる人、歩き続ける人(2010年5月3日)、【備忘】研究者=知識人(2010年7月8日)、研究の独創性(2010年12月8日)に関連して。

中山元「解説――カントの思考のアクチュアリティ」『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』(光文社古典新訳文庫)中山元訳、光文社、2006年.

中山元さんがカントの思想について解説する中で、カントが「哲学者の使命」と考えていたことについて言及しています。研究者や大学の役割にも関連すると思うので、下記に引用します。

「啓蒙の原理にしたがって、学者が公的な理性を行使し、時代を改善し、人々に啓蒙の原理を守らせることは、哲学者の使命だと考えていたのである。/…哲学者は啓蒙の時代にあって、たんに哲学的な理論や体系を構築するのではなく、公的に発言することによって、人々を啓蒙するつとめがあるのである。/そのために必要とされるのが、公的な発言の権利であった。…/権力がもし他者に思想を伝達する権利を奪うならば、それは思考する者に、考える権利まで奪うことになるのである。啓蒙の原理とは『自分で考える』ということであるが、自分で考えるためにはまず、公的に意見を表明する場、みずから真理と考えるものを語る可能性が与えられている必要があるのである。」(pp.373-4.)

「哲学者はみずからの思考の原則を公表し、政治や法律について吟味を加えることで、それが公正なものかどうかを判断することができる。そのためには哲学者は発言の自由を、みずからの原則を公開し、その原則に基づいて判断した結果を公開する自由を、そして他者と『共同で考える』自由を必要とするのである。」(p.375)

コメント:
・この文章の「哲学者」は「研究者」に置き換えられると思います。そして現代において「自分で考える」ことは基本的にすべての人に求められており、その訓練のための主たる場所となっている(なるべきである?)のが大学という機関であると思います。
・「自分で考える」ことの難しさも同時に感じる今日この頃。

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