2011年9月26日月曜日

4大学ジョイント・セミナー

23日~25日の3連休で「4大学ジョイント・セミナー」に参加してきました。

このセミナーは今年で2回目。4つの大学で集まって、院生同士がお互いの研究についてディスカッションをしました。といっても、そんなに堅苦しいものではなく…それぞれが研究を進める上で抱える悩みを共有したり、院生同士の研究ネットワークを広げることも重要な目的です。他大の院生の方と話す中ですごく刺激を受けました。

また今回は東北大学での開催ということで、東北の被災地の様子を見てくることも(自分の!)目的のひとつでした。台風の影響で松島以北には向かうことができませんでしたが、塩釜の市場と松島海岸を見てきました。

塩釜では市場を見に行きました。ほぼ終わりかけの時間に行ったので人はまばら…それでもお店の人が声をかけてくれてうれしかったです。ホタテとツボダイを買って、その場で焼いてもらいました。おいしかった!さらには近くのお店で海鮮丼を食べました。おいしかった!!魚介を焼いてくれた市場の人に聞いたら、午前中はもっと人が多いけれど、震災前よりは少ないというお話でした。

松島海岸の方は建物の一部が壊れていたり、営業していないお店がいくつかありましたが、観光客はけっこう戻ってきている印象を受けました。今回は円通院で数珠を作ってきました。瑞巌寺に行くまでの林道の途中に、ここまで津波が来たということを示す看板がひっそりと立っていました。

今回はさらに北の沿岸部には行けませんでしたが、台風の被害を含めてまだまだ大変な状況なのだろうと思います。できることは少ないかもしれませんが、復興に向けて懸命に頑張っている人のことを忘れないようにしたいと思います。

2011年9月12日月曜日

内藤正典・阪口正二郎編著『神の法vs.人の法』

内藤正典・阪口正二郎編著『神の法vs.人の法――スカーフ論争からみる西欧とイスラームの断層』日本評論社、2007年.

※読書会での課題文献。初回は序章&第Ⅲ編。
序章 スカーフ論争とは何か(内藤正典)/第Ⅲ編 鼎談:共生に向けて何を提起するか――そして私たちにとっての意義(樋口陽一・内藤正典・阪口正二郎)

コメント:
・憲法学と社会学という異なる学問分野から「スカーフ論争」にアプローチした著書。「規範から見るか、それとも現実から見るかでその視角は大きく異なっている」(p.313)。このことを踏まえつつ、「規範と現実との間に、どれほどの乖離があるのかを明示する」(同上)ことが目指されている。
・序章では非常にわかりやすく論点が説明されている。これまで知らなかったイスラームの諸側面も数多い。「ムスリムは、一方で世俗主義の西欧と対立し、他方ではキリスト教の西欧と対立していることがわかる。…スカーフ論争は、もはや単に政教分離をめぐる議論ではない。」(p.25)

論点はどこか?
・樋口さん「一人ひとりの個のアイデンティティを重視するのか、それとも一つの文化のあり方そのものを人のアイデンティティの中心に置くのか。」(p.285)
・内藤さん「個と集団との関係として、どうしても西欧側は均質な集団としてムスリムを捉えがちですが、実はイスラームは、信徒を一つの共同体と捉える反面、個人の信仰のありようは、そもそも誰も問えない構造なのだと理解する必要があるのです。」(p.307)

・内藤さんの発言は、ある意味ではどの宗教にとっても同じように言えるのではないだろうか。キリスト教においても、いろいろな考え方を持つ人がいるだろう。それがイスラームに対してのみあてはめられるという非対称性があるのかもしれない。また「原理的に言えばイスラームには、政教分離の発想がない」(p.14)ということも押さえておく必要があるだろう。ただし、政教分離の発想がないことを否定的にとらえる必要はない。つまり、教会組織と国家が対立しあってきたヨーロッパの状況とは大きく異なる歴史的文脈を持つということである。

メモ:
・「非宗教性/ライシテ(laïcité)」と「政教分離」

2011年9月8日木曜日

小島寛之『使える!経済学の考え方』

小島寛之『使える!経済学の考え方――みんなをより幸せにするための論理』筑摩書房(ちくま新書)、2009年.

引用:
「この本で読者のみなさんに提案しているのは、『無条件で何かを信じる』のではなく、『どんな条件のもとでならそれが正当化されるか』、そういうふうに考えましょう、ということです。つまり、『結論』を急ぐのではなく『前提』を明らかにすることが大事だ、ということです。」(p.8)

コメント:
数学を使って、自由や平等や公正を論じる経済学の著書。ロールズやセンも取り上げられている。経済学というと何となくとっつきにくいイメージがあるが、数学を使うことで議論の筋が見えやすくなることもある。食わず嫌いではいけない…。