2010年10月11日月曜日

ナンシー・フレイザー「再配分から承認まで?」

ナンシー・フレイザー「再配分から承認まで?―ポスト社会主義時代における公正のジレンマ」(原田真美訳)『アソシエ』第5号(2001年1月)、pp.103-135.

※この論文は、1995年3月に開かれたミシガン大学心理学部のシンポジウム"Political Liberalism"における講義を若干修正したものである(p.125)。

構成:
1 再配分と承認のジレンマ/2 搾取される階級、嫌悪されるセクシュアリティ、二価共同体/3 肯定か変容か? 救済問題の再考/4 ジレンマの回避―ジェンダーと「人種」の再考/5 結論

問い:
経済的不公平を解消しようとする「再配分」と文化的不公平を解消しようとする「承認」のジレンマをどのように解消するか?(前者は集団の脱分化を促し、後者は集団の分化を促す点でジレンマの状況にある。)

著者は「肯定」と「変容」というアプローチを提起し、このジレンマ状況を解消するには「変容」アプローチが有効であるとする。
(肯定アプローチ:「再配分」=自由主義的福祉国家/「承認」=主流の多文化主義
 変容アプローチ:「再配分」=社会主義/「承認」=脱構築)

ただし、「このシナリオを心理的かつ政治的に実行可能とするには、自己の利害関係やアイデンティティの基礎となる現在の文化構造に対する執着から、全ての人々を引き離さなければならない」(p.123)という。

コメント:
・わたしは「肯定アプローチ」に基づいてものごとを考えていることが判明。
・確かに「変容アプローチ」は「肯定アプローチ」がもたらす悪循環を回避できる可能性が高いのかもしれない。
・しかし、それに素直に与することができないのは「現在の文化構造に対する執着から、全ての人々を引き離さなければならない」という条件が実行不可能に思えるからだろう。
・ただし、著者の福祉国家と多文化主義政策の限界の指摘はその通りだと思った。
・さらに考えを進める必要あり。

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